#8 新幹線
この小噺はつくり話です。
小林賢太郎氏の作品にインスパイアされて書きました。一部のアイデア、固有名詞をそのまま使っています。出典は最後に書いてあります。
新幹線ってワクワクする。だからけけ氏は新幹線が大好きだ。新幹線の夢を見るほど好きだ。
ー地下室をのぞみが走り抜けていく夢
ー東海道五十三次をのぞみが走っていく夢
ー巨大な女優が新幹線をひっつかんでる夢
ー巨大なヒト型怪獣が新幹線を鷲掴みにして、へんなギャグを言っている夢
虫好きなけけ氏のもう一つの好きなものは水族館。その大好きな水族館に行く時も新幹線を使う。新横浜からのぞみに乗って大阪まで出かけることだってしょっちゅうだ。朝起きてサカナが見たいな、なんて思ったらもう足は駅へと向いている。
車窓を眺めながらふと昔のことを思い出した。小学生だった頃、夏休みは田舎のおじいちゃんの家で過ごすのが習わしだった。両親とクルマに乗っていくのだが、さすがにお盆の時期は渋滞がひどい。
「たまにはクルマやめて新幹線で行ってみるか」
と父親からの嬉しすぎる提案。一も二もなく賛成のけけ氏。やった!大好きな新幹線に乗れる!小学生男子たるもの、これが喜ばずにいられるか。しかも、東北新幹線である。関東地方に住んでいるけけ氏なので、東北新幹線には滅多に乗れないのだった。
「東北新幹線で逢いに行こう」
こんなキャッチフレーズを駅で見かけたことがある。あれに乗れるのか…。けけ氏、もう何日も前からワクワクが止まらない。
しかし、である。喜んでばかりもいられない。抜群の安全を誇る日本の新幹線であるが、過去に乗っ取りに遭っているのだ。当時の新聞記事によると、乗っ取り犯は「だるまちゃんとてんぐちゃん」だったらしい。乗っ取りと言っても人質を取るわけでもなく、なにかを要求したわけではない。むしろ、サービスを提供してくれたほどだったそうだ。乗客にお茶とミカンと歌舞伎揚を配ってくれたらしい。彼らは『のぞみ』のことを『なごみ』と呼んでいた。確かに、なごむ。こんな新幹線なら乗ってもいいな。喜んでばかりいてもいいんじゃないか。新聞やテレビのニュースを見聞きしたけけ氏は子ども心にそんなふうに思っていた。案外オトナであった。
考え事をしているとあっと今に時間が経ってしまう。気がつけばもう大阪。電車を乗り換えて、水族館へ到着。派手な熱帯魚や大きなサメなんかよりも、地味で不思議な生態の生き物に吸い寄せられてしまうけけ氏。何か見つけたようだ。
「ウツボなぁ…。いつ見ても不気味だけど、このフォルムなんか新幹線に似てねーか?」
ガラスに近寄り食い入るようにウツボを見つめるけけ氏。
「東北新幹線?いや、東海道新幹線か?はたまた山陽新幹線?ババンバランバンバン♪」
ゴキゲンなけけ氏、ウツボがツボだったようだ。
(けけ氏がウツボだと思って眺めていた生き物は実はチャ〇スというものだった。似ているので素人には区別が難しいらしい。)
水族館からアトリエに戻ってきたけけ氏、いつものごとくあれやこれやと考えを巡らせる。メモを片手にじっと考え事をしていると、思考がついついあらぬ方向に行ってしまう。手元のメモには何やらウサギの顔が付いた新幹線のようなものが描かれている。なんだこれ?けけ氏、何が描きたいんだ?人面新幹線?いや、うさぎ面新幹線か?これじゃ例の人面機関車のパクリじゃないか。手を止めてまた考える。
「そうなんだよな。オレは新幹線の車掌さんになりたかったんだよ。白い制服に白い手袋。手には懐中時計。くー、かっけー。今からじゃあもう遅いかなぁ…」
どうやら今でも新幹線の車掌にあこがれているらしい。
いずれ、新幹線の車掌さんという役でテレビに出ることになるけけ氏であるが、今はまだそのことは知らない…。
出典
ポツネン氏の奇妙で平凡な日々 Chapter6 取扱説明書
P+ 手の奴東海道
ATOM アトムより
カジャラ#4 ニンゲン
LIVE POTSUNEN 2012 P ドキュメンタリー2
GBL チャンスハンター
椿 心理ゲーム
Hana-Usagi第4巻 テテンテテン
KKTV#8 wonderland