Mr.KK’s untold stories.〜けけ氏はつくることがお好き〜

#38 つくること

 

この小噺は作り話です。

 

小林賢太郎氏の作品にインスパイアされて書きました。一部のアイデア、固有名詞をそのまま使っています。出典は最後に書いてあります。

 

 創る…

 造る… 

 作る…

 拵える…

 

 けけ氏が大好きなつくること。一文字の漢字ではとうてい言い表せないのであえてひらがなで。今回は「つくる人」けけ氏のお話。

 

 彼にとって「つくること」は息をすることと同じで、生きていく上でなくてはならないものである。だから小さい頃からつくることが好きだった。幼稚園の砂場でどうしても内側からトンネルを作りたかったけけ氏。たった1人で砂場で黙々と自分のやり方でトンネルを作った。小学校の時にクラスメイトの中で流行った合体ロボ。けけ氏氏の両親はけけ氏にそのようなおもちゃは与えなかったため、けけ氏は空き箱を使って自分でこしらえた。廊下をビー玉が延々と転がるピタゴラスイッチみたいな仕掛けも自分で作った。

 

 なければ自分で作ればいい。自然と身についたけけ氏の生き方である。

 

 そんな工作大好きけけ少年を両親がサーカスに連れて行ってくれたことがあった。サルティンバンコアレグリアといった演目で有名なシルク・ドゥ・ソレイユがまだなかった当時、屋外で見るエンターテインメントといえばサーカスだった。鍛え上げられた美しい体、おどけて玉乗りをするピエロのなんとも面白い動き。どうしたらあんな風なことができるんだろうと不思議でしかたなかったジャグリング。けけ氏の目は曲芸師に釘付けになった。

 

 なんて美しくて、面白くて、不思議なんだろう。

 

 年齢も性別も関係なくみんなが笑顔になっている。夢中で拍手をおくっている。美しくて面白くて不思議なものを作るとみんながあんなにも喜んでくれるんだ。このことはけけ氏の心の奥底に刻まれることとなった。

 

 中学生になったけけ氏に転機が訪れた。成り行きで劇の台本を書くことになったのだ。カタチのないものをこしらえる初めての経験である。クラスで行う劇の脚本を書き、演出や進行役を務めることになった。何もないところからストーリーを考え、セリフを書き、しんみりさせたり笑わせたり。持てる全てを使って台本を書いた。同時にクラスのみんなに仕事を割り振り、作業の指揮をとる。1人何役こなしただろうか。それでもけけ氏は楽しかった。つくることがこんなにも楽しいなんて!けけ氏はますますのめり込んでいった。

 

 全校生徒の前で発表した劇は大成功。裏方として奔走したけけ氏、たくさんの拍手をもらってなんとも幸せな気持ちになった。つくることってやっぱり楽しい。もっともっといろんなものをつくりたい。そして人を楽しませたい。そう、あの時のサーカスみたいに、いつか自分も大勢の人を楽しませられるようになるんだ。自分のつくったものでみんなを楽しませるんだ。そっと心の中でガッツポーズを決めた。

 

 つくる人、けけ氏の誕生である。

 

 この後の活動についてはこれまでのけけ氏のお話の通りである。以来ずっといろんなものをつくり続けている。コンビやグループでのコント公演。役者仲間と演じたお芝居。一人芝居。テレビにも出た。そして、今年は国際的大運動会のオープニングセレモニーをつくることになった。全世界の人々を相手に、自分がつくるもので沢山の人を楽しませることができるだろうか。いや、そんな心配は無用だろう。けけ氏にとってつくることは生きることなのだ。懸命に生きればその想いは必ず通じる。素晴らしい作品ができるはず。

 

 夜明け前の、世界の片隅のようなひっそりとした森の中で、今日もけけ氏は黙々と最後の仕上げの作業をしている。

 

 セレモニーの幕があがる………。

 

 

 

 

出典

こばなしけんたろう 砂場の少年について

CLASSIC  ベルボーイのホテル旅館化計画

ロールシャッハ

ラーメンズ

小林賢太郎テレビ

カジャラ

KKP

カジャラジオ

TOKYO2020

 

 

 これまで読んでいただきありがとうございました。Mr.KK's untold stories.〜けけ氏は〇〇がお好き〜は第38作目をもちまして終了いたします。小林賢太郎氏の作品の中からたくさんのアイデアを拝借して、賢太郎さんが好きなものを散りばめて、稚拙ではありますが、けけ氏の小噺を創作してきました。使ったアイデアの引用先は出典として全て書いてあります。また、これらの創作文は個人で楽しむために書いたものです。無断転載は固くお断りいたします。

 とは言え、2次創作や著作権に関することもあり、このような創作についてはよく思われない方、ブログで発表することに異を唱える方もいらっしゃるかもしれません。ご意見などありましたらコメント欄にてどうぞご遠慮なくおっしゃってください。

 また、五輪の演出の件についてですが、賢太郎さんがつくったことには変わりはないので、そのことは忘れてはいけないと思い、敢えて変更せずに書きました。(もともと7/23に公開するつもりで書いてあったものなので) こちらについても賛否両論あるかと思いますが、ご意見などありましたらどうぞお知らせください。