Mr.KK’s untold stories.〜けけ氏は天狗がお好き〜

#10 天狗

 

この小噺はつくり話です。

小林賢太郎氏の作品にインスパイアされて書きました。一部のアイデア、固有名詞をそのまま使っています。出典は最後に書いてあります。

 

 遠くから鉦や太鼓の音が聞こえてくる。かすかに「おーえす、おーえす」という掛け声も聞こえてくる。今日はなんの日だったっけ、とカレンダーを確認する。

「あぁ、今日は肌天狗祭りじゃないか。すっかり忘れていたよ」

 肌天狗というのはけけ氏の近所に祀られている天狗のことである。天狗には色々な種類があって、けけ氏の神社にいらっしゃるのは肌が肌色の肌天狗である。聞けば代替わりしてまだ子どもの天狗らしい。毎年天狗塚には近くの酒屋がお酒のお供えをしているが、相手が子どもの天狗なら考えなければならない。チューハイはやめてジュースにするべきか。

「来年は忘れずに御神輿を担がせてもらおう。あのおーえす、おーえすという掛け声、なんかカッコいい。いつの間に変わったんだ?」

けけ氏は早くも来年のお祭りに想いを馳せた。御神輿を担いだ時のあの一体感がたまらない。そして身も心も引き締まる思いがする。

こういう伝統行事は大切にしないといけない。大好きな天狗のお祭りなのだからなおさらだ。忘れずに参加しよう。_φ(・_・メモメモメモメモ

 

 肌が肌色ではない天狗、白天狗という天狗もいる。もちろんけけ氏は見たことがあるわけではない。こちらはどこか人里離れた山奥に住んでいるらしい、という噂である。けけ氏の近所に住んでいる夏歩香くんという男の子が見たと言っていた。

 この夏歩香くん、魔法使いの屋敷に連れて行かれて、魔法使いにさせられたことがあるんだと言っている。その時に自分の魔法で鏡に白天狗の姿を映したというのだ。そういえばたしか去年の夏だったか、夏歩香くんはしばらくの間行方不明になっていて騒ぎになったことがあった。魔法使いに白天狗?普通の大人なら、子どもの戯言ととりあってもらえないであろうが、そこはけけ氏。好奇心のカタマリである。夏歩香くんから根掘り葉掘り話を聞き出したい、と思っている。貴重な体験談ではないか。いずれゆっくりと話を聞いてみたいものだ。今度お茶に誘ってみるか。

 

 天狗についてあれこれ調べているうちに、天狗天狗天狗祭りという奇祭が安田村(あんだーそんではなくやすだむら)という村で行われているという話も耳にした。天狗になった天狗がさらに天狗になり、その荒ぶる天狗を鎮めるお祭りらしい。天狗になった天狗って、どんだけ鼻が伸びてるんだ。見てみたい。好奇心のカタマリのけけ氏。見たくてたまらない。安田村のHPによると一般人も参加できるらしい。天狗好きのけけ氏にはたまらないお祭りである。来年の夏休みは安田村で過ごすことにするか。なになに、ワインもおいしいと書いてあるぞ。これはたまらない…。

「お、ちょうど今からテレビで安田村の特集やるみたいだな」

とテレビのスイッチに手を伸ばしたけけ氏だった。

 

「ニュース速報です。たった今入ってきた情報によると、東海道新幹線のぞみが何者かによって乗っ取られました。乗客のツイッターによると犯人はだるまちゃんとてんぐちゃんと名乗っているらしく、武器は携行していないとのこと。乗っ取り直後には乗客全員にお茶とミカンと歌舞伎揚を配り、みんなを和ませていた模様。犯人の要求は、新幹線の名前を『なごみ』に変えろとのことです。では現場から中継です…。」

 目が点になるけけ氏。だるまちゃんとてんぐちゃんが新幹線をジャックだぁ?安田村の特集はそっちのけでメモを取る。しめしめ、このネタは使えそうだ。面白くなってくれよ〜。テレビにかじりつくけけ氏。

 

 けけ氏のアトリエは今日も平和である。

 

出典

KKTV#4  祭りの跡

K.K.P.#6 TRIUMPH

こばなしけんたろう 天狗天狗天狗祭り

椿 心理ゲーム