#19 怪獣 其ノ二
この小噺はつくり話です。
小林賢太郎氏の作品にインスパイアされて書きました。一部のアイデア、固有名詞をそのまま使っています。出典は最後に書いてあります。
『けけ氏のアトリエ』続き。
3月4日放送『けけ氏のアトリエ』より
けけ氏「みなさん、こんにちは。今日は大怪獣マルラさんにおいでいただいています。マルラさん、ようこそけけ氏のアトリエへ!」
マルラ「おはようございます。どーも。マルラです」
け「おはようございます。なんだか芸能人みたいですね」
マ「ま、一応芸能人のはしくれなんで」
け「さて、マルラさんは暴れないほうの怪獣だと伺っています。暴れないほう、とはどういうことなんですか?」
マ「あ、自分、こう見えて俳優をやっているんですよ。子どもたちが好きな怪獣映画によく出させていただいてます」
け「(どうりでカメラ慣れしてるわけだ)なるほど。最近ですと『マルラ対メカマルラ』ですね。僕も観ました。マルラさん、カッコ良かったです。そうですか、あれ、着ぐるみじゃなくて本物の怪獣だったんですね」
マ「これまでは着ぐるみ怪獣だったんですけど、監督がどうしても臨場感のある怪獣にしたいってことで。オーディションやってたんで受けに行ったんですよ。そしたら合格しちゃって…」
け「撮影で困ったことなんかありましたか?」
マ「セットの建物を踏みつけてぶっ壊してガオーって雄叫びをあげるシーンがあったんですけど、ほら、自分フワッフワじゃないですか。建物を踏みつけたら自分が割れちゃって。なんか子どもみたいながおーになっちゃって…。ま、音は合成でなんとかごまかしたんですけどね」
け「マルラさん、まるで風船みたいですもんね」
マ「あんまり怖くなさそうだから自信なかったんですけど、案外子どもらにはウケたんでよかったです」
け「次回作は?」
マ「まだ決まってませんが、今はハリウッド進出も視野にいれてます」
け「ほおー。ハリウッドですかー。今のうちにサインもらっといていいですか」
マ「どおぞ」
役者として活躍する機会もあるけけ氏なので、今回の怪獣マルラとは話が弾んだ。ハリウッドで怪獣映画か。この国の映画業界もなかなかやるじゃないか。公開されたら絶対観に行こうと心に決めたけけ氏だった。
3月5日放送『けけ氏のアトリエ』より
どしーーん、どしーーん、どしーーん。カチャリ。地響きのような大きな足音とドアがそっと開く音。
けけ氏「けけ氏のアトリエにようこそ。今日はとても大きな怪獣さんにお越しいただいています。おおおおーーーーい、怪獣さーん、聞こえてますかぁ?」
怪獣「はーい、聞こえてますよー」
け「ずいぶんと体が大きいんですね。顔の近くまで行くにはリフトが必要ですかね?」
怪「ま、そーですかね。すみません、でっかくて。ちょっとかがみます」
け「いえいえ、いいんですよ。拡声器使いますから。どうですか、最近、何か変わったことは?」
怪「実はこの間お腹を壊しまして」
け「何か変なもの食べたんですか?」
怪「えーっと、ボウリング場を1つ」
け「ボ、ボーリング場??」
怪「うまかったですよ。でも、なんだか胃がムカムカしましてね。怪獣のお医者さんに診てもらったんですよ」
け「へぇー、怪獣のお医者さんにねぇ」
怪「おじいちゃん先生なんですけどね、胃カメラも入れてくれるし、膝にたまった水も抜いてくれるし、腕はいいんです」
け「ほぉー」
怪「ここいらの怪獣は具合が悪くなると、みんなこの怪獣のお医者さんに診てもらうんですよ。そこのナースがまた可愛くって…」
け「ナースも怪獣なんですか?」
怪「ナース目当てに通ってる怪獣もいますよ」
け「怪獣の世界も人間の世界も案外似てるんですね」
怪「ま、どちらもこの地球上の生き物ですからね」
け「似た者同士仲良くしなきゃってことですね」
怪「そーゆーことになりますね」
け「今日はありがとうございました」
怪「ありがとうございました」
どしーーん、どしーーん、どしーーん。カチャリ。
体はでかいけれど、ドアは静かに開け閉めする、とてもお行儀のいい怪獣であった。
怪獣って一体何を食べているんだ?ボウリング場とかって言ってたけど。そういえばさっきの怪獣の名前を聞くの、すっかり忘れてたな。
けけ氏、怪獣について更なるリサーチを始めた。これまでインタビューしてきた以外にも怪獣はたくさんいる。神と崇められて名前を呼ぶことすら許されていないようなものもいると聞いた。『あれ』としか呼ばれない神秘の怪獣。けけ氏の好奇心をくすぐる。いつかどこかで出会ってみたいものだ。
to be continued
出典
KKTV#5 大怪獣マルラ
The SPOT 怪獣のお医者さん
カジャラ#4 怪獣たちの宴