#23 ウサギ人間
この小噺はつくり話です。
小林賢太郎氏の作品にインスパイアされて書きました。一部のアイデア、固有名詞をそのまま使っています。出典は最後に書いてあります。
「よし、ゴリラの件はかたがついた。ツアーに空きがあってよかった。あとは運良く会えればOKだな。で、こんどはウサギ人間だとぉ?いったいどうなってるんだこの世の中は」
ひとりごちるけけ氏。そもそも怪獣が生息するこの世界である。ゴリラ人間だのウサギ人間だの、いたって全然不思議ではなかろう。いや、むしろ作品のヒントをくれるありがたい存在ではないか。何かヒントになりそうな話はないものだろうか。ワイドショーで色々やっているみたいだ。けけ氏はテレビのスイッチを入れた。
スッカリ! 検証!ウサギ男の実態 より
レポーターが向かった先は都内某所、なんとか井戸にあるホストクラブ。昨夜取材したものであろうか、夜の歓楽街を多くの人々が行き交っている。通行人の1人にマイクを向けるレポーター。
「私は今、ウサギ男が目撃されたホストクラブ近くに来ています。この辺りでウサギ男がひんぱんに出現しているときいています。あ、あそこのメガネをかけた髪の毛がモジャモジャな人にちょっと話をうかがってみましょう。すみませーーーん。キャロットテレビですが、ちょっとお話いいですかぁ?」
「あ、はい」
「この辺りにウサギ男と思わしき人物がいるクラブがあるって聞いたんですけど、ご存知でしたか?」
「あ、はい、噂に聞いたことは」
「お店、行かれました?」
「……………」
「行かれたんですね」
「あ、コレ、顔は出ませんか?」
「大丈夫ですよ。モザイクかかってます」
「(コホン) 昨日行ったんですよ。そしたらね、黒いうさ耳つけた若い男性ホストがいたんですよ。まぁ、話はヘタだし、つーか、全然噛み合わないし、時折イノセントな目で見つめてくるし。早々に引き上げましたよ。あれじゃぼったくりだね」
「じゃあ今日は別のお店に?」
「いや、またそのお店に…なーんかクセになっちゃうんだよね」
「はぁ、そうですか。ご協力ありがとうございました」
「やはりウサギ男の噂は本当のようです。他にも何人かに話を聞いたのですが、客あしらいは全くダメだそうです。黒服より下だって言われてますから大したホストではないようです。ただ、固定客はいるみたいです。私も行ってみたくなりました。こちらからは以上です」
謎のうさ耳ホスト?いわゆるバニーガールの男性版ということですかね。ただのホストではないんでしょうか?云々。番組のコメンテーターたちも興味津々といったところ。けけ氏も画面に釘付けである。メモメモメモ…。心の中でそっといつか行こうと決心する。
国営放送夕方のニュース ニュース速報 より
国営放送のローカルニュースは欠かさず見ているけけ氏。ネタになりそうなニュースはメモをとっている。今夜のニュースは…んんん?
「……ニュースの途中ですが速報です。先ほど都内某所にある警備会社に道場破りがやってきたという一報が入ってきました。要人の警護も行っているその警備会社に2名のバニーガード(ウサ耳警備員)が乱入。そのまま道場破りを決行した模様です。中には新人のバニーガードもいましたが、怪我人などは確認されていません。家族経営の小さな会社なので内輪でなにかもめごとがあったのか、詳しいことはこれから師範代の大吟醸氏に話を聞くということです。事件の内容が分かり次第お伝えします。ではニュースを続けます………」
なんだ、バニーガードって?バニーボーイがガードマンやってるのか?ワイドショーで見たバニーボーイとなんか関係あんのか?けけ氏はメモを取る手を止めて考えた。ウサ耳をつけたSPなんて聞いたことない。目立つことこの上ないではないか。注意をそらすには持ってこいなのか??1度警護を頼んでみるか。あ、でも俺誰にもねらわれてないな…。
いやぁ、それにしてもウサギネタって使えるなぁ。バニーボーイにバニーガードか。そうだ、ウサギを擬人化して漫画にするっていうのはどうだろう。天狗も好きだからここは鼻が長いウサギってのを主人公にしてみるか。早速紙と鉛筆を出してきて漫画のプロットを考えるけけ氏。イヌやネコも登場させよう。考えながら鼻歌を歌っている。
「♪まちぼうけ〜まちぼうけ〜あるひせっせとのらかせぎぃ〜そこへウサギが………」
紙の上を鉛筆が走る音がアトリエに響いている。
出典
CLASSIC バニーボーイ
カジャラ#2 バニーガード
Hana-Usagi
うるうのもり/うるう