Mr.KK’s untold stories.〜けけ氏はゴリラがお好き〜

#22  ゴリラ

 

この小噺はつくり話です。

小林賢太郎氏の作品にインスパイアされて書きました。一部のアイデア、固有名詞をそのまま使っています。出典は最後に書いてあります。

 

「へぇ〜、ゴリラ人間にウサギ人間か…。そんなもんがほんとにいるのかねぇ。何かの見間違いじゃねぇのか?」

新聞を広げ朝のティータイムを楽しむけけ氏。このところ紙面を賑わせているのはヒトなのか動物なのか区別がつかない生物の目撃情報だ。特にゴリラとウサギに関する記事が多く見られる。大抵のことなら面白がるけけ氏だが、今回ばかりはちょっと怪しいと思っている。

「まぁ、信じるもなにも実際にこの目で見ないことにはなぁ。どこに行けば見られるんだ?」

ガサゴソと新聞をめくり記事を読む。

 

夕日新聞より抜粋

働くゴリラ 人手不足もここまで来たか

その会社の総務部の前の廊下には大きなオリが置いてあり、中でゴリラを飼っているらしい。ペットではない。会社のイメージマスコット的な存在でもない。社員の1人に聞いたところ、人事部の部長だという。名前はあるのだがここでは伏せておく。特に何をするでもなくオリの中で大人しく座っているだけというから驚きだ。決裁のハンコなどはどうしているのだろうか。公にしているわけではないので彼の存在を知るものは社外では少ないらしいが、今のところ特段の問題は起きておらず、ゴリラの人事部長はこのまま続行ということだ。このゴリラを採用した人事担当者はもうこの会社にはおらず、採用に至った経緯は不明である。記者もこのまま様子を見て取材を続けたい。

 

「ゴリラの人事部長だぁ?そもそもマジゴリラなの?それとも限りなく人間に近いゴリラなの?限りなくゴリラに近い人間なの?仕事はちゃんとやってるんだろうな。そもそも日本語が喋れるのか?」

就職フェアなんかに行ってリクルートスーツの学生たちと話とかしているのだろうか。謎すぎるぜ…。

 

毎夜新聞より抜粋

道具を使うゴリラ!? フリーマケット会場で目撃

多くの人で賑わうフリーマケットの会場の一角に古びた家具を並べている白髪の男性。普段は山で暮らしているらしいのだが、時折街に下りてきては手作りの家具をフリーマケットで売っている。今回は椅子が商品のようだ。日も暮れかかり、多くの人が店じまいをしかけたその時、そのゴリラはやって来た。白髪の男性が売っている椅子に興味があるようだ。男性は気にする風でもなく黙って見ている。ゴリラは椅子をかたむけたり、持ち上げたり、周りをグルグル回ってみたり、興味津々の様子だ。だが、やがて椅子に対する興味を失ったのか、ゴリラはそのまま黙ってその場を去っていった。椅子を生活の道具として認識し、それを買いにやって来たのか、ただ単に興味があっただけなのか、謎が謎を呼ぶ。次回のフリーマケットの予定は未定。機会があれば男性にも話を聞きたい。

 

「ま、ゴリラだもんな。椅子を見たって使い方はわからないだろうな。『座る』を教えてあげたいものだ」

 

首都新聞より抜粋

雪男現る?あるいはゴリラ? 雪男に遭遇した男性が証言

都内某所。山深いこの地方には昔から雪男の伝説がある。海外で目撃されているような大型のイエティとは違い、どちらかといえばゴリラに近く、衣服を身につけているらしい。二足歩行で動きもゴリラのようであるため、近年では野生化したゴリラではないのかと関係者は語っている。今回その雪男を目撃した男性は「ゴリラではないと思います。ちょっと言葉を喋ったんです。名前をつけてあげたら喜んでました。怪我をした僕のためによもぎを膝にすり込んでくれたんですよ。ゴリラじゃここまでのことは出来ないですよ。ああ、また会いたいなぁ」と記者に話した。ゴリラよりかなり知的能力が高いのか。今後の調査と研究が待たれる。

 

「この男性に会ってみたい!雪男になんて名前をつけたんだ?気になるー。そこまでちゃんと取材しろよなー、首都新聞!」

 

読読新聞より抜粋

バナナを奪うゴリラにご注意!!

都内の某動物園で客のバナナを奪うゴリラが話題になっている。普段はオリの中で大人しくしているゴリラのハナコ(メス3歳)は客が持っているバナナに異常なほどの反応を見せる。毎日もらっているエサにもバナナは入っているのだが、そちらには見向きもせず、バナナを持ってオリに近づいて来た客の手からバナナを奪う。飼育担当者は「お客様にはバナナを持ったまま近づかないでくださいって言ってるんですけど、皆さん面白がってバナナ持って来ちゃうんですよね。怪我人が出ないか心配です。」と語った。今のところ客にに被害はなく、ちょっとしたエンターテインメントとして扱われているようだ。だが、相手はゴリラである。くれぐれも注意したい。動物園では安全にバナナが奪われるような方法を検討していきたいとしている。

 

「ゴリラ人間かぁ…。色々と面白い記事がでてるもんだな。でも、最後のはただのゴリラの記事じゃねーか…。別にいいけど」

 

けけ氏は早速これらのゴリラ(人間)に会える場所を調べ始めた。どこかの旅行代理店で限りなくゴリラに近い人間を見るツアーをやっているらしい。面白かったらいい作品ができるかもしれない。乞うご期待。

 

ウサギ人間の小噺は次回で。

 

出典

Golden Balls Live  ゴリラの松岡さん

DROP  椅子落語 其ノ二

news  雪男

零の箱式 片桐教習所

カジャラジオのコント9 無関心の旅人