#26 カモノハシ 其ノ二
この小噺はつくり話です。
小林賢太郎氏の作品にインスパイアされて書きました。一部のアイデア、固有名詞をそのまま使っています。出典は最後に書いてあります。
こんな夢を見た。
<第二夜>
目を覚ますとそこは森だった。遠くでフクロウが「うるーうるー」と鳴いている。おかしいな、フクロウって「ほーほー」って鳴くんじゃなかったっけ?そもそもここはどこだ?アトリエの近くの森か?にしては山深い感じがするけれど。不思議に思いながらもとりあえず歩いてみることにした。カサコソと足元で枯れ葉が音を立てる音とフクロウの鳴き声以外何も聞こえない。静かな森である。
なんだ?目の前の木の根本に何かいる。イヌくらいの大きさで色もなんだかイヌみたいだ。でもうずくまっている姿はイヌではない。けけ氏は記憶を探る。今までこんな動物見たことあったか?そして記憶の箱の底に引っかかるものがあった。
「あれがそれか…」
幻の生物カジャラである。新聞かなんかで読んだことがあった。ほとんど人目に触れることがないために研究が進んでおらず、哺乳類なのかどうかもわからない。研究者の中にはカモノハシの仲間ではないかと主張するものもいるが定かではない。こんな「つちのこ」レベルに珍しい生物に出会えるなんて、けけ氏ついている。しばしそっと観察を続ける。カジャラもじっとして動かない。あちらもけけ氏を観察しているようだ。
「よく見ると可愛らしい顔してんな」
一歩近づいたところでカジャラはスッと姿を消した。
え〜〜〜〜〜〜!?
………………………………とここでけけ氏は目を覚ました。
「妙にリアルな夢だったな。カジャラの顔、はっきりと覚えてるぞ。後で図書館行って調べてこよう。たしか梶原って先生が論文書いてたはずだ」
幻の生物に夢で出会ったけけ氏。創作意欲がさらにかき立てられた。
<第三夜>
「はぁ?尻尾が生えてるじゃないか?え?全身毛だらけ?どーなってんだ???」
けけ氏はカモノハシになっていた。無理もない。ここんところずっとカタギリだのカジャラだの、カモノハシの仲間ではないかと目されている生物の夢ばかり見ていたのだ。今度は自分がカモノハシになっていても不思議ではない。
カモノハシになったけけ氏の住まいは海の近く。一人暮らしをしていて、職業は漁師。毎日沖へ出ては魚を採っている。黄色いレインコートを着て、背中には魚が入ったカゴを背負い、売りさばきに行ったりもする。仲間もいるし、バーにだって行く。充実した毎日である。
「うん、こんな生活も悪くないな。っていうか、すごくよくねーか?こう、自然と一体になってる感じがたまんないねー」
カモノハシのけけ氏、まんざらでもなさそうである。自然に逆らわず自然体で生きる。寝て食べて働いて飲んでまた寝て………。そりゃ素敵な生活だ。うん、このままこうしていてもいいな……………………………………………とここで目が覚めた。
立て続けにカモノハシの夢を見たけけ氏。妙に親近感がわいてきた。
「よし、今度の休日は動物園でカモノハシを見てこよう。案外俺とか友人のあいつに似てたりしてな」
「え???カモノハシって日本じゃ見られないのか???」
知らなかったでしょ?
(現在日本ではカモノハシを飼育しておらず、オーストラリアに行かないと本物のカモノハシを見ることはできません)
出典
こばなしけんたろう 新生物カジャラの歴史と生態
ハナウサシリシリ 2月12日発売号
ノケモノノケモノ