#31 妖怪
この小噺はつくり話です。
小林賢太郎氏の作品にインスパイアされて書きました。一部のアイデア、固有名詞をそのまま使っています。出典は最後に書いてあります。
親愛なる友へ
やあ、元気にしているか?この頃お互い忙しくて全然会ってないものな。この前一緒に呑んだのはいつだっけ?もうずいぶんになるな。まぁ、このご時世、直接会って呑むのは難しいかもしれないな。近頃流行りのオンライン飲み会、オレたちもやってみるか。
妖怪の研究は進んでいるか?学生の頃からお前は妖怪好きだったもんなぁ。そのまま大学に残って妖怪の研究をするだなんて、冗談かと思っていたけど、今じゃ立派な教授だもんなぁ。妖怪が学問になるって驚いたぜ。学生の頃にお前に頼まれて一緒に出かけたフィールドワーク。あれはほんっとに楽しかった。日本全国をくまなく歩き(オレは当然自転車だったけどな)、地方の妖怪伝説を聞き取り調査する。日本にはまだこんなにも沢山の妖怪がいるんだって、改めて驚かされたよ。数々の妖怪はお前にとっては学問の対象だけれど、オレにとってはアートだった。ちょっと前に世間を賑わせていたアマビエだって、よくよく見ると斬新なデザインだぜ。あれを昔の人が描いたって信じられないや。オレもちょっと描いてみようかな。で、あのフィールドワークのあと、オレは行った先々で食べた郷土料理が気になってな。ネーミングがなんだか妖怪みたいだったんで、郷土料理を妖怪にしてみたら面白いんじゃないかって色々と絵にしてみたんだ。ま、新種の妖怪を勝手に作っちまったってわけ。結構楽しませてもらったよ。HPに載せてあるんで暇なときにでも見てくれ。
そういえば、知り合いにホテルでコンシェルジュやってるやつがいて、そいつが言ってたんだけど、妖怪の都市伝説みたいなのがあるんだってさ。その名も『妖怪浴衣脱がせ』。ほら、ホテルや旅館で着る浴衣ってあるじゃん。あれって、どう頑張って上手く着られたとしても、朝には必ずはだけててあられもないカッコになってるだろ。絶対妖怪が夜中に脱がせに来るんだぜ。スケベなやつ〜。あとな、カッパでもないのに尻子玉が好きな妖怪とかな。こっちは刑事の身体に取り憑くらしい。こえ〜。キャンプ場で夜中に肉じゃが配りに来るってのもいるらしいぞ。今でもこういうたぐいの妖怪はいるんだな。積極的に会いたいとは思わないけど、いたらいたで面白そうだな。どうだ、一度調べに来いよ。付き合ってやらないこともないぜ。
ところでさ、座敷童子ってのも妖怪の一種なのか?取り憑いてくれるといいことがあるって言うじゃないか。貧乏神の反対みたいなものなのか?ん?じゃ、神なの?スッゲーじゃん。うまいこと取り憑いてくれたらラッキーじゃね?
コレも聞いた話なんだけど、おっきなネコの妖怪ってのもいるらしいな。『注文の多い料理店』みたく山奥でレストランだかおにぎり屋さんだかをやってるって聞いた。騙されないように気をつけないとな。ネコ好きのオレはちょっと行ってみたいけどさ。
でね、話は急に変わるんだけど、最近詐欺電話って多いだろ。あれさ、お互い合言葉を決めておいて、開口一番それを言えなかったら電話を切るってことにしとけばいいと思うんだよね。例えばさ…
プルルル〜プルルル〜
「はい、もしもし」
「妖怪豆燃やしだよぉ〜」
「あ、おまえか。おつかれっすー」
「おつかれっす」
ほら、これなら相手が詐欺のやつかどうか見分けがつくだろ?好きな妖怪の名前にでもしとけば忘れないし。いいアイデアだと思うんだよな。今度電話するときに言ってみるんで、リアクションよろしくな。
近いうちにまた連絡するよ。オンライン飲み会やろーぜ。じゃ、達者でな。
6月某日
けけ
出典
KKTV#4 郷土料理を妖怪にしてみた
KKTV#4 まやかしの画廊
CLASSIC 1313
KAJALLA#3 グリーングリーン
カジャラジオのコント1 もう寝ました?
KKTV#5 マルポ便
「本」公演 in 神保町
カジャラジオのコント14 嘘ばっかついてください