Mr.KK’s untold stories. 〜けけ氏は忍者がお好き〜

#12 忍者

 

この小噺はつくり話です。

小林賢太郎氏の作品にインスパイアされて書きました。一部のアイデア、固有名詞をそのまま使っています。出典は最後に書いてあります。

 

 どうしてだろう。忍者にどうしようもなく惹かれてしまう。頭巾に怪しげな武器。火遁の術とか大蛇に変幻するとか、もうかっこよくて仕方がない。もしかして前世は忍者だったんじゃないかとすら思えてきた。今からでも遅くない。忍者になることはできるのだろうか。となると、どこかへ修行に行かなくちゃならないな。東海道の京都の近く近江の国あたりか伊賀のあたりか…。

 

 サンタクロースは本当にいると信じている子どもがいるように、忍者も本当にいると信じている子どももいる。けけ氏もそのひとり。子どもの頃はもちろん今でも忍者はいると固く信じている。子どもの頃から忍者モノの古い映画が好きで、繰り返し見ては真似をしたものだった。あの、すり足ですすすすーっと移動する小走りとか、背中に刀をさして走るとか、とにかくできることは何でもやった。体に染みついているせいか、大人になった今でもすぐできる。手で印を結び、呪文のようなものを唱えるやつ。あれも死ぬほどやった。

「臨兵闘者 皆陣列在前!」

などは今でも口をついて出てくるほどだ。印を結び呪文を唱え、大蛇に変幻する。なんともカッコ良いではないか。

 これらの一連の忍者の動きはけけ氏の創作にも大きな影響を与えている。先だって手がけたアニメ映画のエンディングでは、歌の振り付けはけけ氏自らが行ったのだった。けけ氏得意の動きをすればいいだけなので、すぐ出来た。振り付けやるのって楽しくてしかたない。けけ氏はノリノリで踊り続けた。それというのも、このアニメ、主人公が忍者だったのだから。

 

 時を遡ること数年。けけ氏は自身の作品を上演するためにヨーロッパに向かっており、しばし機上の人となった。ヨーロッパとの時差は9時間。眠れないけけ氏はペーパーナプキンに顔がお尻みたいな忍者を描いていた。その時近くを通りがかったアテンダントの男性が、そのイラストを見て「いいね!」のサイン。この忍者、ウケてる。やはりニンジャは世界でも通用するのだ。よし、それならもっと人数増やしてみるか。それ!分身の術〜。

 というわけで生まれたのが「カラフル忍者いろまき」という忍者。顔がお尻みたいでプリっとしてて可愛い。自分が忍者になってやりたいことをこれでもかと詰め込んでみた。忍者の装束といえば闇に紛れる黒がポピュラー(くろまき)だが、緑色とか黄色とかがあってもいいじゃないか。忍者がカラフルって本来なら仕事にならないが…。まあいい。そうだ、赤い忍者は「あかまき」、黄色の忍者は「きいろまき」。けけ氏ならではの発想である。緑色の忍者は「みどりまき」。うーん、これじゃちょっとパンチが足りない。「グリまき」なんてどうだ。

 それはさておき、アニメは大成功。映画館で上映された。忍者好きの子どもたちに楽しんでもらえただろう。忍者の「にん」は忍という字。忘れるという字に似ているから間違えないでもらいたい。子どもたち、しっかり覚えるんだぞ。忍を忘れるんじゃないぞ。にんにん。(いけない!違うアニメの忍者になってる!)

 

 もし、何か願い事がひとつだけ叶うとしたら、皆さんは何を願うだろうか。願いが叶う権利を100回にするっていうのは当然ナシである。けけ氏なら迷わずこう言うだろう。

「忍者にしてください。忍者になって天井からさかさまにぶら下がってみたいです。水蜘蛛で水の上を歩いてみたいです」

仕掛け扉からグルンと出てきて、天井からぶら下がり火遁の術なんかを使って姿を消すってのもいいな。

「もはやこれまでか。ごめん!ボンッ!」

考えただけでゾクゾクする。

 

 うーん、何かいい方法はないものだろうか。地下足袋の底に強力な磁石をくっつけといて………。

仕事そっちのけで忍者になり切る方法を考え始めたけけ氏。日本のテクノロジーに期待しよう。

 

 やってやれねえことはねぇ。

…どこかで誰かが言ってたな…。

 

出典

P+ 手の奴東海道

good day house  3rd floor

CHERRY BLOSSOM FRONT 345  マーチンとプーチン2

カラフル忍者いろまき 制作ドキュメンタリー

KKTV#6 くろまき

TEXT 銀河鉄道の夜のような夜

KKTV#5 厨房忍者